【議会意思を示すことの重要性】
2021年03月17日
本日は、予算特別委員会が開催されました。
松本市議会はこれまで予算の入口と出口が異なる委員会付託方式を取っていましたが、
原案一体の原則(予算の入口と出口は同じ所管で扱うべきとする考え)から外れる懸念から、
約半世紀ぶりに予算特別委員会を設置することとなりました。
このところ松本市議会では、議案の漏れやムラを精査する際にこれが弊害となる事も出始めてきたことから、
私自身、大学院での講義を復習したり、
昨年の夏に松本市議会女性議員の勉強会でこのテーマを扱ったりするなど、
事あるごとに勉強の機会を重ねてきましたので、
今回、教育民生委員会の分科会長となるにあたり、落ち着いて議事運営ができたことは良かったと思う反面、
議会として何ができて何ができないかを知らずに会議に臨む場合と、
知った上で会議に臨む場合の違いの怖さをあらためて認識した次第です。
さて、なぜ議会意思を示す必要があるかという問題ですが、
議会制度の存在意義と絡めて考える必要があります。
1999年の自治法改正により、国と地方公共団体は、上下関係から、対等・協力関係へと、その位置づけが大きく変わりました。これは一見、地方分権の推進とも受け取れますが、言い換えれば、自治体の自己決定権と自己責任の拡大を意味します。
また、地方公共団体は、その都市ならではの独自事業を行うことができます。例えば、コロナ対策など、市区町村ごとに支援内容が異なるのはこのためです。
ところで、首長は、その自治体に住民登録をしていなくても、満25歳以上であれば立候補できます。これに対し、市区町村議員は、自身が選挙権を有する自治体でなければ(=住民登録をしていなければ)立候補できない仕組みとなっています。
これは、明治時代における市制町村制の名残とも思われますが、首長の役割は、行政運営が主たる目的とされてきたのに対し、議員は、住民の代表機関としての役割を果たすことが目的とされてきたからだと考えられます。
ということは、行政運営に対し、議会がどれだけ意思を表明できるか、また、行政の意思決定に関与できるかが重要な課題となってきます。
自治体の自己決定権が拡大すればするほど、長の意思決定や行政の力が強大になるわけですから、住民の命と財産を守るためのチェック機能など、市区町村議会の果たすべき役割もますます増えていく事になるからです。
そのようなわけで、議会意思を示すことは、地方自治にとって大変重要な意味を持つわけですが、その貴重な機会の一つが、予算審査です。
予算審査における議会意思の示し方は、4点あります。
・減額修正(認められない事業の予算を削る権利)
・予算組み換え(減額修正の資料を準備する時間がない場合などに用いる権利)
・附帯決議(議会の意見・要望を公式に表明する権利)
・増額修正(長が実施の方向性の事業にのみ適用できる権利※極めて条件は厳しい)
今日の委員会では、減額修正案1件、附帯決議案1件、減額後の当初予算案がそれぞれ採択されましたが、
残念ながら新庁舎建設事業に関する附帯決議案は不採択となりました。
この附帯決議案の論点は、新庁舎建設事業に対する議会意思をどう示すか、というまさに1点でした。
新庁舎建設事業は、現在、市の示す新たな方向性に議会の理解が得られておらず、審査は継続となっています。
継続ということは、プラスにもマイナスにもできないことを意味するのですが、
新年度予算案では、これが不用額として落とされています。
これは、少し極端な話で例えると、重箱に収められた一切れのお餅を市と議会とでどちらが食べるか話し合っていたけれど、決着がつかないので少し休憩しましょう、といって休憩している間に、市がこっそりお餅を食べて、重箱だけ元の場所に残して置いた、という状態です。
では、それに気づいた議会は、どう意思表示すればよいのでしょうか。
一般的には、まだどちらが食べるか決めていないのだから、決まるまで重箱を触るべきでない、市が元の重箱にお餅を戻すべきだ、と考えるのではないでしょうか。
新庁舎の附帯決議案は、まさにこの考えを議会に与えられた限られた権限の中で行使しようとしたものです。
これまでの新庁舎建設特別委員会の議論を議会意思として形に表すならば、私はこの貴重な機会をしっかり使って、附帯決議として採択しておくべきだっただろうと思いますし、恐らく議会制度を知る専門家なら、そのように進言したと思います。
私たち議会人には、ごく限られた機会しか議会意思を表明する機会がないからこそ、日頃からこうしたことを意識して活動しなくてはなりません。
その活動の根底にあるのは、住民目線に立った行政サービスの展開が行われるかどうかですが、そのためには、議員も日ごろから住民の声を聴き、政策に代えてその声を反映させる力に加えて、自治体が示した政策案の漏れやムラを指摘し、より良い政策へと導ける力も欠かせません。
私もそれを意識しながら、多くの資料を読み込んだり、様々なネットワークから得た情報を収集して会議に臨んでいますが、言葉で言うほど簡単ではないと日々感じています。
しかしながら、これからも、広く住民の合意を得ながら政策を立てることの重要性を訴え続け、議会意思として示すべきものは示していきたいと思います。
松本市議会はこれまで予算の入口と出口が異なる委員会付託方式を取っていましたが、
原案一体の原則(予算の入口と出口は同じ所管で扱うべきとする考え)から外れる懸念から、
約半世紀ぶりに予算特別委員会を設置することとなりました。
このところ松本市議会では、議案の漏れやムラを精査する際にこれが弊害となる事も出始めてきたことから、
私自身、大学院での講義を復習したり、
昨年の夏に松本市議会女性議員の勉強会でこのテーマを扱ったりするなど、
事あるごとに勉強の機会を重ねてきましたので、
今回、教育民生委員会の分科会長となるにあたり、落ち着いて議事運営ができたことは良かったと思う反面、
議会として何ができて何ができないかを知らずに会議に臨む場合と、
知った上で会議に臨む場合の違いの怖さをあらためて認識した次第です。
さて、なぜ議会意思を示す必要があるかという問題ですが、
議会制度の存在意義と絡めて考える必要があります。
1999年の自治法改正により、国と地方公共団体は、上下関係から、対等・協力関係へと、その位置づけが大きく変わりました。これは一見、地方分権の推進とも受け取れますが、言い換えれば、自治体の自己決定権と自己責任の拡大を意味します。
また、地方公共団体は、その都市ならではの独自事業を行うことができます。例えば、コロナ対策など、市区町村ごとに支援内容が異なるのはこのためです。
ところで、首長は、その自治体に住民登録をしていなくても、満25歳以上であれば立候補できます。これに対し、市区町村議員は、自身が選挙権を有する自治体でなければ(=住民登録をしていなければ)立候補できない仕組みとなっています。
これは、明治時代における市制町村制の名残とも思われますが、首長の役割は、行政運営が主たる目的とされてきたのに対し、議員は、住民の代表機関としての役割を果たすことが目的とされてきたからだと考えられます。
ということは、行政運営に対し、議会がどれだけ意思を表明できるか、また、行政の意思決定に関与できるかが重要な課題となってきます。
自治体の自己決定権が拡大すればするほど、長の意思決定や行政の力が強大になるわけですから、住民の命と財産を守るためのチェック機能など、市区町村議会の果たすべき役割もますます増えていく事になるからです。
そのようなわけで、議会意思を示すことは、地方自治にとって大変重要な意味を持つわけですが、その貴重な機会の一つが、予算審査です。
予算審査における議会意思の示し方は、4点あります。
・減額修正(認められない事業の予算を削る権利)
・予算組み換え(減額修正の資料を準備する時間がない場合などに用いる権利)
・附帯決議(議会の意見・要望を公式に表明する権利)
・増額修正(長が実施の方向性の事業にのみ適用できる権利※極めて条件は厳しい)
今日の委員会では、減額修正案1件、附帯決議案1件、減額後の当初予算案がそれぞれ採択されましたが、
残念ながら新庁舎建設事業に関する附帯決議案は不採択となりました。
この附帯決議案の論点は、新庁舎建設事業に対する議会意思をどう示すか、というまさに1点でした。
新庁舎建設事業は、現在、市の示す新たな方向性に議会の理解が得られておらず、審査は継続となっています。
継続ということは、プラスにもマイナスにもできないことを意味するのですが、
新年度予算案では、これが不用額として落とされています。
これは、少し極端な話で例えると、重箱に収められた一切れのお餅を市と議会とでどちらが食べるか話し合っていたけれど、決着がつかないので少し休憩しましょう、といって休憩している間に、市がこっそりお餅を食べて、重箱だけ元の場所に残して置いた、という状態です。
では、それに気づいた議会は、どう意思表示すればよいのでしょうか。
一般的には、まだどちらが食べるか決めていないのだから、決まるまで重箱を触るべきでない、市が元の重箱にお餅を戻すべきだ、と考えるのではないでしょうか。
新庁舎の附帯決議案は、まさにこの考えを議会に与えられた限られた権限の中で行使しようとしたものです。
これまでの新庁舎建設特別委員会の議論を議会意思として形に表すならば、私はこの貴重な機会をしっかり使って、附帯決議として採択しておくべきだっただろうと思いますし、恐らく議会制度を知る専門家なら、そのように進言したと思います。
私たち議会人には、ごく限られた機会しか議会意思を表明する機会がないからこそ、日頃からこうしたことを意識して活動しなくてはなりません。
その活動の根底にあるのは、住民目線に立った行政サービスの展開が行われるかどうかですが、そのためには、議員も日ごろから住民の声を聴き、政策に代えてその声を反映させる力に加えて、自治体が示した政策案の漏れやムラを指摘し、より良い政策へと導ける力も欠かせません。
私もそれを意識しながら、多くの資料を読み込んだり、様々なネットワークから得た情報を収集して会議に臨んでいますが、言葉で言うほど簡単ではないと日々感じています。
しかしながら、これからも、広く住民の合意を得ながら政策を立てることの重要性を訴え続け、議会意思として示すべきものは示していきたいと思います。